狂おしいほどに、抱きしめて〜エリート社長と蕩けるような甘い蜜愛〜
「これ、俺のアドレス。後で連絡して? ずっと待ってるから」

渡された名刺の裏には、メッセージアプリのQRコードが印字されている。
栗花落はそれを受け取ってから、ソファを立ち上がった。

「勤務時間中に、ご迷惑をおかけしました。業務に戻りますので、本日はありがとうございました」

「そういう堅苦しいのはいいよ。俺は栗花落が元気に仕事してくれれば、それだけで嬉しいから」

「また、連絡します。……社長のこと、男性として、気になりますので」

栗花落の精一杯のお気持ち表明に、翔は目を見開く。

「そうか。嬉しいな」

照れたように笑うその顔も、爽やかで可愛らしい。
ポリポリと頬を掻いた翔は、その後ふっと息を吐いて、いつもの冷静な表情に戻った。

「じゃあ、また」
「はい。また」

栗花落は頭を下げて、執務室を後にする。
(席に戻ったら、彩絵ちゃんがいる。すっごく居心地悪いし、嫌なこともあるかもしれない。でも……今は、社長から貰ったこのネックレスがあるから、少しだけ気持ちを強く保てそう)

栗花落はそう思いながら、一歩ずつ前に進み、フロアの扉を力を込めて開いた。
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