狂おしいほどに、抱きしめて〜エリート社長と蕩けるような甘い蜜愛〜
仕事は忙しい。だが、今日中に残業しないといけない業務は残っていないはずだ。
定時で帰ることで明日にしわ寄せは来るだろうが、翔とデートするためと思えば、多少の我慢はできる。

『私も上がれますよ。食事でもしますか?』

すると、すぐに返信が届いた。

『面白いレストランを見つけたんだ。個室で、映画を観ながら食事ができるっていう』
『えっ。面白そう! 行ってみたいです!』
『そうか? なら、今日はそこに行こう』
『楽しみにしてます!』

栗花落がウサギの笑顔のスタンプを送ると、翔もパンダが親指を立てているスタンプを送ってくる。

(映画デートか……。個室でってことは、スキンシップもありだよね……)

執務室で彼の身体に触れた時、トクンと胸が高鳴った。
と同時に、とても安心して、人肌に触れているだけでこんなにも心が落ち着くものなのだと、びっくりしたものだ。

「……楽しみ」

憂鬱な仕事が終われば、後は楽しいことだけが待っている。
そう思えば、仕事も捗るというものだ。

「先輩。このパワポなんですけど、三ページ目と四ページ目で言ってることが矛盾しているような気がして――」
「ん? ミスあった?」
「ミスというか、ここの件数が――」

彩絵のことは、この先も一生許さない。
でも、それを仕事に持ち込むのはタブーだ。

話し掛けられるたび、胸がざわざわするけれど、耐えろ……!

栗花落はそう自分に言い聞かせながら、今日もなんとか定時まで仕事を終えることができた。
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