狂おしいほどに、抱きしめて〜エリート社長と蕩けるような甘い蜜愛〜
勝に傷つけられた栗花落の心が、徐々に新たな恋へ歩み寄り始めている。
勝は、栗花落が欲しい時に、欲しい言葉を言ってくれる人ではなかった。
どちらかと言えば、追いかけていたのは栗花落の方で、勝は自然体で栗花落と接してくれていた。

そんな彼とは打って変わって、翔はどこまでも栗花落を追いかけてくれる。
きっと、こんな恋もアリだ。
与えられる愛に溺れるのは、追いかけるのとはまた違った喜びがあった。

(私、翔さんとなら……一線を越えても、後悔しないのかな)

翔に『ずっと好きだった』と言われ、底なしの愛を与えられ、嬉しいプレゼントや言葉をたくさんくれる。
これ以上、恋人に求めるものなんて、何もないと思えるほどに。
彼はそんな、栗花落の欲しいものを全てくれる人だ。

(これ以上、何を不安に思うことがあるのだろう?)

翔は誰よりも、栗花落のことを大切に想ってくれている。
それは、言葉でも、肌でも感じていた。
きっと、この先も一生、翔よりも栗花落のことを大切にしてくれる男性とは出会えないだろう。

ここで、彼の手を取らなかったら、一生後悔すると思う。
それだけは、確かな事実だから。

「翔さん……」
「ん? なんだ?」

栗花落は抱きしめる彼の両腕を掴んで、ぎゅっと力を込める。
それから顔を上げて、彼の唇に向かって、そっと自身の唇を重ね合わせた。

「……!」

翔の唇が小刻みに震えている。
きっと、栗花落の方からキスしてきたことに驚いているのだろう。

(後悔なんてない。私は、翔さんのことが好き……)

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