狂おしいほどに、抱きしめて〜エリート社長と蕩けるような甘い蜜愛〜
「翔……さん。私を、抱いて?」

その一言で、翔の心に火が点いた。
翔は映画の停止ボタンを押すと、食事もろくに手をつけないまま、鞄を手にして栗花落の手を引く。

「この後……ホテル取ってあるんだ。そこに行こう」

ホテルの予約までしてあるなんて、翔は最初から栗花落を帰さないつもりだったのだろうか。
だとしても、その気持ちが、今は嬉しい。

(そんなに、私のことが好きなのね……?)

お互い、二人きりの空間で過ごしたせいで、身体が限界を迎えている。
今はただ、その心と身体を愛したい。
心を丸裸にして、身体を重ねて、愛を囁き、幸せに胸をときめかせたい。

急いで会計を済ませて、駅の方向にまた戻る。
そしてプリンスホテルのチェックインを済ませると、エレベーターに乗って客室に向かった。
十三階の角部屋が、今日予約をしている部屋のようだ。
翔はカードキーをかざして扉を開くと、余裕のない表情で栗花落とベッドに向かう。

「栗花落!」

栗花落を勢いよくベッドに押し倒して、その上に跨る。
彼の吐息は乱れ、着用していた紺のネクタイが曲がっていた。
彼は面倒そうに片手でネクタイを外すと、栗花落の頬に熱く口づけをする。

「……栗花落。栗花落」

彼は何度も名前を呼んで、栗花落の存在を確かめるようにキスを繰り返す。
それに応えるうちに、栗花落は満足げに小さく笑った。

(我を忘れちゃうくらい、私のことが好きなの? それってなんだか、ふふっ。……可愛い)

唇が重なりあって、熱い吐息が頬にかかるたび、満たされていく心地がする。
(幸せって……こういう瞬間のことを、言うのかな?)

栗花落はそんなことを思いながら、翔の着ていたシャツのボタンに手をかけた。

「私が、脱がせるね?」

いつもなら、性行為は受け身なのに、今日は攻めの姿勢を持ちたいと思う。
彼の愛に応えるには、こちらも動かなければならない。
そう思うから、栗花落は翔のシャツのボタンを、一つずつ外していく。

ボタンが外れたことで、隙間から彼の上半身が見える。
ゴツゴツとした逞しい筋肉に、透き通った白い肌。
腹筋は綺麗に六つに割れ、無駄な贅肉は見当たらない。
普段から鍛えていないと、この体型を維持するのは困難だろう。

(そういう努力家なところも、好き)

翔に好きと言われてから、欠点という欠点が一つもない。
彼はまさしく、栗花落の好きなタイプ、そのものだ。

もしかしたら、これが運命なのかもしれない。
翔と居るだけでこんなにも幸せな感情になれるのは、きっと……彼が特別な人だから。

「脱げたよ?」
上半身に纏うものを取り払った彼の下半身は、その形を衣服の上からでも浮き彫りにさせている。

「下も……脱がせて?」

翔のおねだりに、栗花落は笑みを浮かべた。
「うん。もちろん」

彼から纏うものを一つ取るたびに、ああ、好きだと、本気で考える。
この身体を、自分のものにしたい。
誰にも盗られたくない。
他の誰にも、彼の優しさを知られたくない。

「私のことを好きになってくれて、ありがとう」

この出会いを、これからも大切にしたい。
好きだと言ってくれる彼の気持ちに応え、その愛を全力で受け止め続けていたい。

「絶対に、離さないからな?」
「うん」

栗花落はそんな言葉とともに、彼とその日、朝まで身体を重ね合い、その愛を昇華させたのだった。
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