狂おしいほどに、抱きしめて〜エリート社長と蕩けるような甘い蜜愛〜
ガタンッ!

勝はここに人が居たことに驚いたのか、背後にあった書棚に思い切りぶつかる。
栗花落はそんな二人の前に姿を現し、冷静に声を掛けた。

「何してるの? 二人とも」

何をしているか、それは明白だ。
これは浮気、どう考えても不貞行為だ。

(ついこの前、プロポーズしてくれたのに。あんなにも真剣な顔で、将来のことを考えてくれていたのに。勝の頭の中には、もう一人の女が居たなんて……!)

勝は、栗花落に浮気がバレたことで動揺したのか、逃げるように足を後退させる。
すると、今度は狭い資料室に積みあがった段ボールにぶつかり、ぐらりとファイルが入った箱が地面に落下した。

「あっ。や、やべっ。あ、いや。その」

勝は必死に言い訳を考えているのか、言葉になっていない発言を繰り返す。
しかし、後輩の彩絵はと言うと、この状況が面白いのかクスクスと一人で笑っていた。

「え~。先輩にこんなところ見られちゃうなんて、誤算ですぅ~。別に私、先輩の彼氏だから盗りたいとか、そういうんじゃなくて~。て言うか、言い寄ってきたのは勝の方で、私はただ、何度か食事に連れてっていただいただけなんですぅ」

「ち、違う! この子が俺に言い寄ってきて、ちょっと……。に、二回! 二回食事に行っただけで!」

「あ、でも、食事した後は、ホテルにも行ったんですけどぉ」

「おい! この状況で、余計にこじれるようなこと言うなよ……!」

二人の言い合いなんて、どうでもいい。
『浮気があった』。
それは変わらぬ事実なのだから。

(しかも、何? 彩絵ちゃんにはずっと、入社した時から仕事を教えたり、優しく接してきたよね? 彩絵ちゃんに恨まれるようなことは何一つしてない。勤務中も、よくコミュニケーションを取ってた。なのに、その態度は何? なんで、ずっとクスクス笑ってるのよ!)

彩絵は、嘲笑するかのようにこちらをニヤニヤ見て、挑発するように言う。

「先輩~。そんな怖い顔しないでください~。それに、この状況って100%先輩が被害者なんですか~?」

「……どういう意味?」
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