狂おしいほどに、抱きしめて〜エリート社長と蕩けるような甘い蜜愛〜
「彩絵ちゃんはおかしい! なんでもすぐに容姿で馬鹿にされてるって思いこむなんて! それって、自分で自分を下げてるって分からないの? 誰も彩絵ちゃんのこと仕事できないなんて思ってないし、彩絵ちゃんのこと認めてる! どうしてそれが分からないの!?」

栗花落の言うことは、至極真っ当な正論だ。
しかし、彩絵の心には響かない。
彼女は呆れたように大きなため息を吐いて、栗花落を牽制する。

「はぁ~~。先輩、この期に及んでまだ言い訳ですか? 『容姿で馬鹿にしてごめんなさい』って言葉は出てこないんですか? ……ほんと、サイテー!」

彩絵は頑なに、栗花落に容姿で馬鹿にされたと思い込んでいる。
(その勘違いを解きたいけど……。私、この子に彼氏を寝取られたんだよ? もういいじゃない。気にすることない。この先も一生、勘違いさせたままでも……)

でも、それはなんだかモヤモヤする。
どうして、こんなことになったのだろう。

私が、誤解させるような振舞いをした?
……いや、私はただ、相談しただけだ。
それを曲解して、勝手に復讐の炎を燃やしたのは、彩絵の方で……。

「私……私……」

こういう時、何を言えばいいか、とても迷った。
この状況で何を言っても、彩絵には逆効果だと思ってしまったから。

けれど――――。


「先ほどから言い合ってる声が、廊下じゅうに響いてるぞ。言葉は凶器になることを、君は理解していないのか?」


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