狂おしいほどに、抱きしめて〜エリート社長と蕩けるような甘い蜜愛〜
「え、だって~……」

彩絵はひとしきり笑ってから、栗花落を見て小馬鹿にするように口角を上げた。

「先輩がつまらないから、勝は浮気したんじゃないですかぁ?」

「……は?」

(何を言ってるの? 私が、つまらない?)

「だってそうでしょ? 何の意味も理由もなく、男って浮気ってします? 現状がつまらないから、納得がいかないから、浮気するんじゃないですか? それって、先輩が女としての魅力に欠けるから、私という女の身体を求めたんじゃないですか~?」

ドクン――!
どうしてだろう。少しだけ、自覚があったから閉口してしまった。

三年という長い期間の交際で、ここ最近、マンネリ状態が続いていたことは事実だ。
最近では、まだ結婚前だというのに、半年もレスが続いている。

(レスは良くないって、分かってた。でも、勝も私を求めてくれなかったし、私から誘って断れたことは、数えきれないくらいある。次第に、私自身、二人でお菓子を食べながら、家でテレビを観る時間も良いなって……。こういう時間を大切にするのも悪くないって、最近は思い始めていたから)

「先輩、レス気味だったんですよね? 勝がよく拗ねてました~。だから私が、かわいそ~な勝の相手をしていたってだけで」

「う、うるさい!」

栗花落は痛いところを突かれて、思わず叫んだ。

「彩絵ちゃんには関係ないでしょ! 浮気は浮気! う、訴えるんだから!」

「訴える? そんな面倒くさい、お金ばっかりかかるようなこと、先輩がするとは思えないんですけど~?」

脅したところで、彩絵は余裕綽々だ。
栗花落にそんな金銭的、精神的余裕がないことを、完全に見透かされている。

「まぁ、いいや! これで先輩の結婚話も破談ですかね? それなら本望です~」

「本望? どういうこと?」
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