狂おしいほどに、抱きしめて〜エリート社長と蕩けるような甘い蜜愛〜
二人で電車を乗り継ぎ、恵比寿駅で下車をする。

(恵比寿……。正直、初めて降りたかも……)

あまりにも都会過ぎて、今まで縁遠かった駅だ。
正直なところ、ここに何があるのか、どういう駅なのか、栗花落はまだよく分かっていない。
しかし、翔は道に迷うことなくすいすい歩いていて、本当にここに住んでいるんだと実感する。

時刻は二十時を過ぎた頃。
大通りに差し掛かると、木々には電灯のイルミネーションが巻き付けられていて、キラキラと街頭が明るく照らされている。

「ここ、クリスマスになるとイルミネーションが変わって、さらに綺麗になるんだ」
「へぇ~!」

今でもこんなに綺麗なのに、クリスマスになるとさらに明るくなるのだろう。
(私も、見てみたいな。クリスマスの飾りつけ)

そうして、五分ほど歩き続けたところで、五十階建てのタワーマンションが見えてきた。
翔はそのマンションを指さすと、栗花落に言う。

「ここだよ。俺の家」

栗花落は顔を思い切り上げて、タワーマンションの最上階を眺める。
「首が痛くなりそうなほど、高いですね」
「そうか? 駅近なのにそこまでうるさくなくて、良いところだよ」

確かに、ここは駅から近いが、騒々しい音はあまり聞こえない。
タワーマンションの周辺には綺麗に植えられた花々が咲き誇っていて、普段からきちんと手入れがされているのだと思う。

「ついてきて? 鍵開けるから」
「はい!」

彼とエントランスを通ると、何度かカードキーをかざす場面に出くわす。
どうやら、セキュリティはかなり頑丈なようだ。
エントランスにはコンシェルジュも在中していて、大きなソファが置かれた広場と、ピアノを演奏できるスペースも完備されている。
翔と栗花落は高層階用エレベーターに乗り込み、四十七階のボタンを押すと、機体が勢いよく急上昇した。

「耳がツンとするだろう。水を飲むといい」
翔はそう言って、ペットボトルの水を鞄から取り出す。

「あ、大丈夫です。唾を飲みこめば」
「そうか? 気分、悪くなってない?」

「このくらいで気分は悪くならないです! 気にしすぎですよ!」
「良かった。安心したよ」

あっという間に四十七階に到着し、扉が開く。
長い室内廊下を歩いた先、角部屋の4710室が翔の部屋のようだ。

翔は二つの鍵をそれぞれ開錠し、扉を開く。

「どうぞ、入って」
「お邪魔します」
< 42 / 69 >

この作品をシェア

pagetop