狂おしいほどに、抱きしめて〜エリート社長と蕩けるような甘い蜜愛〜
いきなりの提案に、栗花落は硬直してしまう。
(一緒に住む? それって、同棲……?)

「いいだろう? 栗花落も、ここが気に入ったんだよな?」

「え、と……。そうです、けど……」

悩む栗花落に追い打ちをかけるように、翔は言葉を重ねていく。

「一緒に暮そう。俺が必ず、栗花落を幸せにするから」

「……幸せに?」

翔は迷うことなく頷いてみせる。

「ああ。そうだ。俺は、栗花落と一緒に幸せになりたい」

彼の真剣な眼差しを見ていたら、栗花落の胸がトクンと、大きく脈を打った。

「い、いいんですか? 私がここに住んでも」
「もちろん。そのために、このマンションを購入したんだから」

栗花落は、改めて周囲を見渡す。
綺麗に飾られた食器棚、テレビ台の上には大切に育てているのだろう観葉植物がある。
きっと、翔はマメな人間なのだろう。掃除も毎日欠かさずやっているのかもしれない。
外から見える景色はとても綺麗で、まるでホテルの最上階のスイートルームに宿泊しているような気分だ。

(こんなにも素敵な場所で、翔さんと二人きり)

そんな未来を、栗花落は想像してみる。
仕事から帰って、彼のために夕飯を作る。帰ってきた彼を玄関で迎えて、思い切りハグをするのだ。
そして、一緒にご飯を食べて、翔と一緒に片づけをしてから、映画やドラマを観賞する。
互いに感想を言い合って、目を合わせて笑い合う。
そして……夜になれば、同じベッドで同じ時を過ごす。

「私……寝相悪いですよ?」
「ハハッ。それも、可愛いな」

翔に笑い飛ばされて、栗花落も笑った。

「料理は、濃い味が好きです」
「俺もだよ。栗花落と一緒に食べるご飯なら、正直なんだっていいけど」

「ブロッコリーとアスパラガスは、食卓に出てきません」
「嫌いなのか? 食べたくなったら、レストランで食べるよ」

(そうやって……なんでも笑顔で、受け止めてくれるのね)

「会社から疲れて帰ってきたら、愚痴も言っちゃうかも」
「俺で良ければ、なんでも話を聞くよ」

「……私、翔さんが思うよりずっと、普通の人間ですよ?」
翔は頷いた。

「それでも、俺にとっては特別な人だよ。栗花落は」

トクン────。
その言葉は、素直に嬉しかった。
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