狂おしいほどに、抱きしめて〜エリート社長と蕩けるような甘い蜜愛〜
第6話 休日、彼と一緒に
そこからは、栗花落にとって慌ただしい日々が続いた。

仕事と並行しながら自宅の荷造り、運送業者の手配。
その後、引っ越し作業を終えてから、今度は荷解きだ。
翔には見られたくないものも多い栗花落は、一人で荷解きのすべてを行った。

(う~ん。この下着……まだ着るかなぁ。着ないよなぁ)

何度も洗濯を繰り返したことでクタクタになったブラジャーなどの下着は捨て、大切に集めていた好きな歌手のCDなど、綺麗に木製棚に収納していく。

翔の用意してくれたマンションは3LDKのため、寝室、翔専用の部屋と、栗花落専用の部屋も一つ用意があった。
寝室は翔と同じだが、プライベートな時間はお互い、別々の部屋で過ごそうという考えだ。

栗花落の部屋として用意されていた空き室は、六畳ほどの広さのある空間だった。
前に住んでいたワンルームよりは狭い空間となるが、同棲する上でここまで広い部屋を用意してもらえるのは、有難いことこの上ない。

(子どもができたら、こんなに贅沢な部屋の使い方はできないけど……。今はまだ、考えることじゃないもんね)

と、プライベートは目まぐるしい変化を遂げているが──。
仕事の方はと言うと、栗花落の所属する部署は変わらないが、そこにはもう、彩絵が居ない。
彼女は今月から、事務サービスを担当する庶務の部署に異動になった。
そこは基本的に、派遣社員や再雇用制度で雇われている社員らが配属される場所で、簡単な雑事しか任されないことに、彩絵はさぞ不服だろう。
だが、彼女には実力がある。
いつか、またその力量を認められて、会社の中枢を担う職務に当たることも、不可能ではないはずだ。

一方で、勝は会社を退職した。これを機に、逃げるように転職をしたのだ。
最後まで、彼から謝罪の言葉を聞くことはできなかったが、その点に関してはもう諦めている。
彼と交際した時間は、無意味なものだった。
けれど、今が幸せなのだ。何も文句はない。
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