狂おしいほどに、抱きしめて〜エリート社長と蕩けるような甘い蜜愛〜
そう言って、翔は笑顔で鳥の照り焼きを頬張ると、驚いた様子で目を見開いた。

「これ、美味しい! 照りが良い感じ!」
「そう? 生姜が効いてるでしょ?」

翔の言う通り、今日の照り焼きはかなり美味しくできた自信がある。
特に新しい調理器具を買った訳ではないのだが、火加減がちょうど良くできた。

「俺、こういうの作れないから、尊敬するな」
「でも、私は翔みたいに綺麗好きじゃないから。翔が家事してるところ見てると、凄いな~。私にはできない、て思う」

すると、翔は小さく頷いて笑った。

「じゃあ、お互い凄いんだね?」
「ふふっ。そうそう! お互い凄いの!」

二人でひとしきり笑って、一緒に夕飯を食べ進める。
翔は先ほどまで疲れた顔をしていたのに、ご飯を食べて元気が出たのか、特に普段と変わらない様子だ。
栗花落も引っ越し作業が落ち着いて、これからはリラックスした時間を翔と過ごしたいと思っている。
すると、翔はふと顔を上げて、栗花落に問いかけた。

「なぁ。一緒に旅行、行かない?」

「……旅行?」

それは想像していない提案だった。
栗花落が首を傾げると、翔は頷く。

「温泉旅行とかさ、良いと思うんだけど」
「……え? 休みは取れるの?」

栗花落の素朴な疑問に、翔は苦笑した。

「取れない……。だからさ、土日とかに」
「あ~。なるほど」
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