狂おしいほどに、抱きしめて〜エリート社長と蕩けるような甘い蜜愛〜
旅行当日。
一泊二日の簡易な旅だと言うのに、栗花落はスーツケースに荷物をたくさん詰めてしまった。
化粧水や美容液はもちろんのこと、お風呂場に用意されたシャンプーリンスが髪に合わなかったら嫌なので、入浴に使う一式も持参済みだ。

その一方で、翔は大きめのバッグ一つと、かなりラフな恰好だ。
本来の一泊二日の旅として、一般的な男性の荷物量と言えるだろう。

まずはホテルにチェックインをし、荷物を置く。
水着は更衣室が用意されているらしいから、ひとまずアクティビティに必要な荷物をビニールバッグに入れ、一緒に更衣室へ向かった。

「ここで待ち合わせだから、よろしくな?」
「うん! そんなに時間掛からないと思う!」

栗花落は女性更衣室に入り、急いで黒の水着を着用する。
普段は髪を下ろしているが、今日はリボンで結んだ方がいいだろう。
ポニーテールにして、鏡の前で自分の容姿を確認する。

(肌面積少な目だけど、大人っぽい黒ビキニ。翔は気に入ってくれるかな?)

胸の谷間にはゴールドのアクセサリーがついていて、かっこいいお姉さんの印象があり、そこが購入の決め手となった。
下半身はアシンメトリーなスカートがついていて、右足の太ももを覆い隠すような長い丈のものだ。
肌の露出は少ないものの、自分の好きな水着を翔にも見てもらいたい。
そんな思いから、新しい水着を購入せず、敢えてお気に入りの一着で勝負をすることにした。

栗花落はビニールバッグを手にして、翔との待ち合わせ場所に向かう。
既に翔はそこで待っていてくれて、栗花落を見かけるなり手を振ってくれた。

「栗花落」

彼は、栗花落の水着姿を見て、一瞬ドキリとした表情を見せる。
彼は最初の言葉を何にするのか悩んだのか、一度名前を呼んだきり、口を閉ざしてしまった。
そして、翔の鍛え上げられた肉体を、改めて水着という形で目にした栗花落も、なかなか声が出せずにいた。

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