狂おしいほどに、抱きしめて〜エリート社長と蕩けるような甘い蜜愛〜
そうこうしているうちに列は進み、ドクターフィッシュの泳ぐ水槽は目の前まで迫っていた。
「あ、順番だよ」

二人は従業員の指示に従い、ドクターフィッシュの泳ぐ水槽の中に、そっと両足をつける。
すると、ふよふよとドクターフィッシュが近くまでやってきて、足のかかとに何匹もくっつきはじめた。

「ふふっ。何これ! くすぐったい!」
「確かに。くすぐったいな」

何匹ものドクターフィッシュが両足をツンツンとついばんできて、栗花落はくすぐったさから頬を震わせる。

「ふふふふっ。あ~、ダメ。耐えられない!」

栗花落が足をバタバタさせると、ドクターフィッシュは驚いたように離れていく。
一方で、翔は自分の足についた魚たちを興味津々に眺めている。

「可愛いな」
「そう? なんかもう、くすぐったい!」

すると、翔はどこか嬉しそうに、にんまりと微笑む。

「栗花落がくすぐりに弱いってことは分かったよ」
「……っ。私をくすぐったりは、しないでね?」

しかし、翔は目を細めて笑ったままだ。

「その笑み! 絶対に後でくすぐるつもりでしょう?」
「……さあ? どうかな」

翔はクスッと笑って、視線を戻す。
「はい。以上で終了で~す」

(ようやく、終わった……!)

栗花落は水の中から足を出して、ふぅ、と息を吐く。

「私はもう、これいいかも……」
「俺は栗花落の弱点を知れて楽しかったから、満足だ」
「……もう」

ぷっくりと頬を膨らませてみせるも、翔は笑ったままだった。
< 57 / 69 >

この作品をシェア

pagetop