狂おしいほどに、抱きしめて〜エリート社長と蕩けるような甘い蜜愛〜
「……」

栗花落の一言に、翔は完全にフリーズする。

(あ。やっぱり、ダメ……?)
栗花落の心に緊張が走る。

しかし、五秒ほどで我に返ると、翔はソワソワと落ち着かない様子で口を開いた。

「そ、それ、本当かっ?」

栗花落は、顔を強張らせたまま、頷く。

「……うん。検査結果、見る?」
「見る!」

栗花落はリビングに戻り、隠した検査薬を翔に見せた。
見ると、先ほどよりも濃く、妊娠線が浮かび上がっている。
彼はそれを見るなり、栗花落の肩を掴んで喜びを露わにした。

「栗花落……! ありがとう! やった。赤ちゃん……。子どもが、できたんだ!」

彼の喜びようを見て、素で喜んでいるのだとすぐに分かった。
栗花落は一頻り安堵すると、翔は満面の笑みで続ける。

「男の子かな? 女の子かな? 名前も決めないとな。洋服と……おむつも!」
「まだ気が早いよ」

「でも、生まれるのなんてすぐだ! 一年後には忙しくなる! 今から育休のプランも立てておかないと……!」
「え? 翔も育休取るの?」
「当たり前だろう? 短い期間にはなるが、栗花落に全て押し付けるなんてできない」

彼が子どものようにはしゃぐ姿を見て、栗花落もついつい嬉しくなってしまう。

(これからは、三人で家族……なんだよね?)

まだ、男の子か女の子かも分からない。
栗花落と翔の子どもなんて、まだ想像もつかないけれど……自分のお腹の中に、新しい命が一つ、眠っているのだ。

「栗花落」
翔は突然真剣な顔をすると、栗花落と向かい合う。
「どうしたの? 翔」

どうして、そんなに真剣な顔をしているのだろう。
すると、翔は、真っすぐ栗花落を見て、告げた。

「――――俺と、結婚してほしい」

「……!」

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