狂おしいほどに、抱きしめて〜エリート社長と蕩けるような甘い蜜愛〜
その日から、出産に向けての準備が始まった。
婦人科検診の際は翔も必ず付き添ってくれ、性別が女の子と分かってからは、二人で生まれてくる赤ちゃんのための洋服やおむつ、あやすための玩具などを購入した。

「他に何か、要るものはあるだろうか?」
「う~ん。正直、今の時点で買いすぎじゃないかな……?」

ベビーベッドにはくるくると回転する玩具が備え付けられ、洋服は十枚近く用意がある。リビングの床も、赤ちゃんが動きやすいようにクッションマットレスを敷き、完全に赤ちゃんが生まれる準備が整っている状況だ。

「名前は何にする?」

そう。これは至上の命題だ。
生まれてくる赤ちゃんに名前をつけられるのは、今だけ。
もし変えたくなったとしても、遅い。その子の人生を左右するものだから、慎重に選ばなければならない。

「春に生まれてくるから、小春は?」
「なんで俺たちの子が小さいんだ」
「あ~。そういう」

どうやら、翔は相当な拘りがありそうだ。

「気を衒った名前にして、日常生活で『なんて読むの?』と聞かれるような名前にはしたくない。それと、4月に生まれてくることを考慮した名前がいい」

「なるほどね……」

となると、そこそこ安易な考えでもあるが。

「桜はどう? 春っぽいし、絶対に呼び間違えはないよ」

「……桜、か」
翔はう~ん、と悩みはじめる。

「少し時間をくれるか? 字画が良いか確認する」
「うん。そうだね、字画大事」
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