狂おしいほどに、抱きしめて〜エリート社長と蕩けるような甘い蜜愛〜
一緒にパソコンで字画が良いかを診断する。
そわそわと名前を打ち込むと、結果がすぐに表示された。

「蓬田桜は、どうやら特殊格らしいな」
「人並み以上の才能と感性だって。最高じゃん!」

「だが、天画が凶だぞ?」
「私これ、子どもの頃いろいろ試したことがあるんだけど、凶が一つも出ない画数ってほとんどないんだよ。それより、一つでも良いところがある名前の方がいいって」

「なるほどな……。それなら、桜の特殊格は捨てがたいか」
「私、特殊格って初めて見たかも。基本、良くても大大吉とかだよ。これはかなりのアドバンテージ」
「う~ん。やっぱり、俺たちの子どもは非凡であってほしいよなあ」
「ふふっ。なにそれ。でも、何かに突き抜けた子だったら、応援してあげたいよね」

二人は悩みに悩んだ末、一つの結論を出した。

「よし。俺たちの子どもの名前は、桜だ」
「うん! 決定!」

二人でつけた名前は、とても呼びやすい『桜』だ。
すると、栗花落のお腹がトクンと動いて、思わず声を上げた。
「あ、今、お腹蹴ったよ」
「ほんとか? 桜って名前、気に入ったのかな」

翔は栗花落のお腹に手を置いて、そっと問いかける。
「桜。聞こえてるか?」
「ふふっ。赤ちゃんにも、話しかけると聞こえてるみたいだよ」

「そうか。これからも、たくさん話しかけてあげないとな」

(翔との子ども。桜。どんな子なのかな?)
勉強は好きだろうか? それとも運動? 音楽という道もあるかもしれない。
本が好きな子かもしれないし、テレビをずっと観ている子かもしれない。

「どんな子でも、愛してあげたいね」
栗花落の願うような一言に、翔は大きく頷いた。

「ああ。絶対に、幸せにしよう」
「約束だよ?」
「約束」

栗花落と翔は指切りげんまんをして、笑い合う。
それは幸せなひと時で、栗花落はお腹をさすりながら、これから生まれてくる子どもの幸せを切に願っていた。
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