狂おしいほどに、抱きしめて〜エリート社長と蕩けるような甘い蜜愛〜

そうして時は流れ、出産予定日の一週間前。

「ううっ……。痛い」
「栗花落!? 大丈夫か?」

栗花落が部屋でテレビを観ていたら、その日は突然訪れた。
「痛い……いたぃ」
「今すぐ病院に行こう。連絡するから!」

慌てて翔は産婦人科に電話を入れ、タクシーで病院まで向かう。
栗花落はすぐに分娩室へと運ばれ、翔は分別室の外で待機することとなった。

「ああ。生まれるね。あと少しだ」
先生の一言で、栗花落は今日が出産日になることを、改めて自覚する。
「痛いです……」
「そうだよね。これから一緒に頑張りましょう」

そうして、三時間近く、分娩室での格闘は続いた。
栗花落はずきずきとした激しい痛みに耐えながら、赤子が無事に顔を出すことを祈り、医師の指示に従って力む。

──そうして。
「おぎゃあああ。おぎゃあああ」

響いた産声に、意識が混濁する栗花落はハッとさせられた。
「……は」

やっと、生まれたのだ。
翔と栗花落の、可愛い女の子が。

「おめでとうございます。元気な赤ちゃんですよ」
栗花落の前に現れたのは、真っ赤でしわくちゃな小さな赤ちゃんだった。
産湯で綺麗にされたその身体はとても小さくて、可愛らしい。
「この子が、桜」

「あら。もう名前も決まってるんですね」
「あ、そうなんです」
「赤ちゃん、抱いてみますか?」
「はい。お願いします」

白いタオルにくるまれた赤子は、栗花落の前に差し出される。
栗花落は赤子を両手で慈しむように抱きしめて、その顔を見つめた。
「ふふ。翔かな? 似てるの」

「栗花落!!」
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