狂おしいほどに、抱きしめて〜エリート社長と蕩けるような甘い蜜愛〜
――――二年後。

「だぁー! ママー!」
「ああ、もう! おむつ変えてる時に動き回らないで~!」

無事に出産を終えた栗花落は、現在、子育てに奮闘中だ。
翔と二人で必死に子育てし、この前、桜はなんとか一歳の誕生日を迎えることができた。

桜は好奇心旺盛な子で、夜になってもなかなか寝付かない。
ベッドの上に身体を置いても、すぐにころんと起き上がり、はいはいをしてしまう子だ。

(元気なのは良いことだけど、もう少し寝てくれ~! 私の睡眠時間がなくなっちゃうんでしょ~!)

桜が生まれてくるまで、正直なところ、子育てというものを舐めていたと思う。
可愛い子どもの為ならなんでもできる、と思っていたけれど、実際のところは(眠いから、早く寝て……)と、願ってしまう自分がいる。
日中はリビングにあるあらゆる物を舐めて、最近では携帯の充電コードが唾液で壊れてしまった。
翔が完璧に掃除をしているのに、何故か桜の手の平をふと見てみると、埃だらけ。
それをぺろぺろと舐めてしまうから、本当に困ったものだ。

けれど、子育ては楽しさももちろんある。
そして何より、翔と掛け替えのない生活を送る中で、幸せを感じることだって少なくない。

リビングにある戸棚の上には、結婚式の時に翔と二人で撮影した写真が並ぶ。
最近では桜も入れた三人の写真が増えてきて、そろそろ戸棚に置ききれなくなる予定だ。

「桜! これ以上動き回ったら、おむつ変えてあげないよ!」
「あはっ」

ぷっくりと頬を膨らませて怒ってみるも、むしろその顔が面白いらしい。
桜はケタケタと笑って、余計に動き回り始めてしまう。
すると、翔がこの戦いに参戦してくれた。

「桜~。パパがここに居るから、もう動いちゃダメだぞ~」

翔は桜の身体を抱きかかえ、栗花落のところまで連れてきてくれる。
桜は足をバタバタさせているが、翔のがっしりとした身体に捕まれば、もう動けない。

「あっ。あっ」

翔が身体を抑えている間に、急いでおむつを取り替える。
栗花落はぽんと桜のお尻に手を当てて、翔に言った。

「翔、ありがとう。おむつ変えられた!」

「そうか? 良かったな~! 桜!」
「あ~!」

桜と正面から向かい合って、翔は頬にすりすりと頬を寄せ合う。
翔は、仕事で忙しいながらも、家に居る間は極力子育てに参加してくれている。
仕事で疲れているはずなのに、弱音は一つも吐かない。
むしろ、桜と同じ時間を共有できて、楽しくて仕方がないのだろう。
今では子煩悩なパパ、まっしぐらだ。

「栗花落」
「ん? なに?」

翔に呼び止められて、栗花落は振り返る。
翔は笑みを浮かべたまま、桜を胸に抱いて、告げた。

「愛してる」

これからは、翔と、桜と、三人の生活が続いていく。
それはきっと、幸せの始まり。

「私もだよ。翔」

そして、この幸せはこの先も変わることはない。
……そう。

────これが私の、幸せな結婚生活だ。

―完-
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