一途なショコラティエの溺愛にとろけているので、六股幼馴染の束縛はお断り!
最悪な幼馴染
 私には、最低で最悪な幼馴染がいる。

香菜(かな)は、ピンクが似合わねぇな。もう二度と、その色は着るなよ』

 ある時は、着ている洋服にケチをつけ……。

『なんでロングヘアにしたんだ? 短くしろ』

 またある時は、髪型を伸ばすように強要してきた。

 一体なんの権限があって、私に命令しているのだろう?

 さっぱり理解できなかった私は、その命令に何度も逆らった。
 でも……。

『なんで俺の言うことが聞けねぇんだよ!』

 彼は思い通りにならないと、すぐに手と足が出るのだ。
 机を蹴ったり、殴って壁に穴を開けたりする。
 酷いと私の髪を引っ張ったり、腕を強く掴んできた。

 大暴れされると迷惑でしかないし、自分の身が危ない。
 言うことさえ聞いていれば、彼は別人のように大人しく機嫌がいい。

『香菜ちゃんのためにも、周りのためにも。これが最善なのよ』

 遠回しに、彼の両親から犠牲になってくれと言われた私は、仕方なく幼馴染の命令に従い続けた。

 ――本当は、女の子らしいピンクが好きだ。

 ――ロングヘアが一番似合うと思っている。

 ――男女兼用の服よりも、女性らしいワンピースが着たい。

 私が私らしく生きるためには、彼の存在は不要でしかなかった。
 なのに……。

『香菜は俺の女だ。手を出すなよ』

 彼は仲間内に堂々と、私と交際しているのだと豪語していたらしい。

 そんな事実は一切、ないのだけれど。

 親同士が仲良く、家が隣同士だっただけなのに……。
 どうして私は幼馴染を満足させるためだけに、生きなくてはならないのだろう……?

 疑問を感じた私は、高校時代にアルバイトをして必死に貯めたお金を使い、大学の入学を機に一人暮らしを決意する。

真田(さなだ)大原(おおはら)は、大学も同じなんだって?』
『当たり前だろ。俺達は何があっても、ずっと一緒に決まってる。だって俺らは、運命の赤い糸で繋がっているからな!』

 引き攣った笑みを浮かべながら彼のことを欺く半年間は、生きた心地がしなかった。

 もしも嘘がバレたら、直也(なおや)は怒り狂うだろう。
 頭に血が登った彼は、何をするかわからない。

 それが怖くて、私は必死に嘘をつき続けて――。

 やっと、今日と言うこの日を迎えた。
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