一途なショコラティエの溺愛にとろけているので、六股幼馴染の束縛はお断り!
「ありがとう、真田。あの日俺と、出会ってくれて」
「い、いえ! こちらこそ……! 私は岡本さんと出会えて、とっても幸せです……!」
岡本さんが作った一口フロランタンに舌鼓を打ちながら、幸せを噛みしめる。
親元を離れて五年。住む場所を変え、父親以外との連絡を断った私の人生は、平和そのものだ。
このまま、彼ともっと仲良くなって……。
結婚を前提としたお付き合いができればいいのに……。
「真田」
「は、はい!」
「携帯、鳴っているぞ」
ぼんやりと岡本さんが閉店準備をする姿を眺めていれば、彼に声をかけられた。
夢を思い描いている場合じゃないと慌ててお礼を告げてから、携帯を取り出して耳に当てる。
「もしもし?」
『久しぶりだな、香菜……』
こんな時間に、誰だろう?
硬い声で電話に出れば、聞こえて来たのは憔悴しきった父の声で……。
「お父さん? どうしたの?」
『母さんが倒れた。もう、長くはないらしい。申し訳ないが、一度顔を見せに来てくれないか』
それは、思いがけない提案だった。
やっと幸せになれそうだと、思っていたところだったのに。
地元に戻ったら、直也と鉢合わせてしまうかもしれない。
「真田」
あの人が大嫌いな容姿をしている今の私が、彼と顔を合わせたら――暴力を振るわれてしまう可能性だってある。
最悪の場合は、ここに戻ってこられないかも……。
「どうした。顔色が悪い」
「あ……」
岡本さんに、心配をかけてしまった。
なんでもありません。
そう言って、安心させなければならないのに……。
お母さんが死ぬかもしれない。
会いに行けば、直也から酷い扱いを受ける。
そう考えたら、うまく言葉が出てこなかった。
「父親と、仲が悪いのか」
「……い、え……。父との仲は、良好です……」
「ではなぜ、そんな顔をしている」
岡本さんは、苦い表情をしている。
大好きな人だからこそ。
私のことは、なんでも知ってほしい。
悲しい気持ちにさせたいわけではないのに……。
『香菜? 誰かと一緒にいるのか?』
「ご、ごめんね。お父さん。このあと向かうから……!お母さんが入院している病院、メッセージで教えて!」
電話越しの父へ矢継ぎ早に伝えると、通話を終えて岡本さんを見上げる。
彼は内容を把握したからか、目を見張っていた。
「い、いえ! こちらこそ……! 私は岡本さんと出会えて、とっても幸せです……!」
岡本さんが作った一口フロランタンに舌鼓を打ちながら、幸せを噛みしめる。
親元を離れて五年。住む場所を変え、父親以外との連絡を断った私の人生は、平和そのものだ。
このまま、彼ともっと仲良くなって……。
結婚を前提としたお付き合いができればいいのに……。
「真田」
「は、はい!」
「携帯、鳴っているぞ」
ぼんやりと岡本さんが閉店準備をする姿を眺めていれば、彼に声をかけられた。
夢を思い描いている場合じゃないと慌ててお礼を告げてから、携帯を取り出して耳に当てる。
「もしもし?」
『久しぶりだな、香菜……』
こんな時間に、誰だろう?
硬い声で電話に出れば、聞こえて来たのは憔悴しきった父の声で……。
「お父さん? どうしたの?」
『母さんが倒れた。もう、長くはないらしい。申し訳ないが、一度顔を見せに来てくれないか』
それは、思いがけない提案だった。
やっと幸せになれそうだと、思っていたところだったのに。
地元に戻ったら、直也と鉢合わせてしまうかもしれない。
「真田」
あの人が大嫌いな容姿をしている今の私が、彼と顔を合わせたら――暴力を振るわれてしまう可能性だってある。
最悪の場合は、ここに戻ってこられないかも……。
「どうした。顔色が悪い」
「あ……」
岡本さんに、心配をかけてしまった。
なんでもありません。
そう言って、安心させなければならないのに……。
お母さんが死ぬかもしれない。
会いに行けば、直也から酷い扱いを受ける。
そう考えたら、うまく言葉が出てこなかった。
「父親と、仲が悪いのか」
「……い、え……。父との仲は、良好です……」
「ではなぜ、そんな顔をしている」
岡本さんは、苦い表情をしている。
大好きな人だからこそ。
私のことは、なんでも知ってほしい。
悲しい気持ちにさせたいわけではないのに……。
『香菜? 誰かと一緒にいるのか?』
「ご、ごめんね。お父さん。このあと向かうから……!お母さんが入院している病院、メッセージで教えて!」
電話越しの父へ矢継ぎ早に伝えると、通話を終えて岡本さんを見上げる。
彼は内容を把握したからか、目を見張っていた。