一途なショコラティエの溺愛にとろけているので、六股幼馴染の束縛はお断り!
「……入院か……」
「は、はい。両親とは、離れて暮らしているのですが……。母が長くないそうで……」
「……それは早く、病院に向かったほうがいいな。ただ、もう遅い。場所にもよるが、真田は車を持っていなかっただろう。今日中に着けるのか?」
「東京駅まで行けば、父が迎えに来てくださるそうなので……。新幹線の終電で向かいます」
「もう出ないと、間に合わないな」
「そうですね……」
もっとお話をしていたかった。
お母さんに会うよりも、岡本さんと一緒にいることを優先したい。
そう彼に縋ることができれば、どれほどよかったことか――。
私は悔しさを表情に滲ませながら、笑顔で岡本さんに別れを告げた。
「閉店間際に、申し訳ありませんでした。また来週、顔を出します」
「何を言っている」
「……ご迷惑をおかけしたので……。もう、出禁ですか……?」
駄目だ。
泣きたいわけじゃないのに、瞳が潤んでしまう。
こんな情けない姿を見せて、嫌われたくない。
下を向いてゴシゴシと目を擦れば、その手を岡本さんに掴まれた。
思わずはっと顔を上げれば、唇が触れ合ってしまいそうなほど顔を近づけて、こちらを覗き込んでいる彼の姿が見えて――。
「擦るな。目が腫れてしまう」
「あ……。こ、これは……」
「暗い夜道を、一人で歩かせるわけにはいかない。駅まで送る」
「で、でも! 閉店作業がありますよね!?」
私は岡本さんの申し出を必死に固辞したが――彼は涼しい声で、衝撃的な言葉を告げた。
「もう終わった」
「だ、だけど……!」
「いこう」
「岡本さん!?」
彼は手首を掴んでいた手を引っ張ると、出入り口に向かって歩き始める。
ドアの前までやってきた岡本さんは、店の戸締まりを終えると私を車に乗せ、運転席に座った。
助手席でシートベルトを着用しながら、私は思わぬ展開に目を白黒させることしかできない。
――まさか岡本さんの車に乗って、駅まで送ってもらえるなんて思わなかった……!
密室の車内で二人きり。
これって実質、デートだよね!?
付き合ってすらないのにテンションが上がりっぱなしの私は、憂鬱な気分が一瞬で吹き飛んでしまった。
――たった数分だけでも。
恋人気分になれる出来事が体験できて、内心お祭り騒ぎの私は、一生駅に着かなければいいのにと叶わぬ願いを思い描く。
「は、はい。両親とは、離れて暮らしているのですが……。母が長くないそうで……」
「……それは早く、病院に向かったほうがいいな。ただ、もう遅い。場所にもよるが、真田は車を持っていなかっただろう。今日中に着けるのか?」
「東京駅まで行けば、父が迎えに来てくださるそうなので……。新幹線の終電で向かいます」
「もう出ないと、間に合わないな」
「そうですね……」
もっとお話をしていたかった。
お母さんに会うよりも、岡本さんと一緒にいることを優先したい。
そう彼に縋ることができれば、どれほどよかったことか――。
私は悔しさを表情に滲ませながら、笑顔で岡本さんに別れを告げた。
「閉店間際に、申し訳ありませんでした。また来週、顔を出します」
「何を言っている」
「……ご迷惑をおかけしたので……。もう、出禁ですか……?」
駄目だ。
泣きたいわけじゃないのに、瞳が潤んでしまう。
こんな情けない姿を見せて、嫌われたくない。
下を向いてゴシゴシと目を擦れば、その手を岡本さんに掴まれた。
思わずはっと顔を上げれば、唇が触れ合ってしまいそうなほど顔を近づけて、こちらを覗き込んでいる彼の姿が見えて――。
「擦るな。目が腫れてしまう」
「あ……。こ、これは……」
「暗い夜道を、一人で歩かせるわけにはいかない。駅まで送る」
「で、でも! 閉店作業がありますよね!?」
私は岡本さんの申し出を必死に固辞したが――彼は涼しい声で、衝撃的な言葉を告げた。
「もう終わった」
「だ、だけど……!」
「いこう」
「岡本さん!?」
彼は手首を掴んでいた手を引っ張ると、出入り口に向かって歩き始める。
ドアの前までやってきた岡本さんは、店の戸締まりを終えると私を車に乗せ、運転席に座った。
助手席でシートベルトを着用しながら、私は思わぬ展開に目を白黒させることしかできない。
――まさか岡本さんの車に乗って、駅まで送ってもらえるなんて思わなかった……!
密室の車内で二人きり。
これって実質、デートだよね!?
付き合ってすらないのにテンションが上がりっぱなしの私は、憂鬱な気分が一瞬で吹き飛んでしまった。
――たった数分だけでも。
恋人気分になれる出来事が体験できて、内心お祭り騒ぎの私は、一生駅に着かなければいいのにと叶わぬ願いを思い描く。