一途なショコラティエの溺愛にとろけているので、六股幼馴染の束縛はお断り!
「守ってやれなくて、すまなかったなぁ……」

 大原家と家族ぐるみで付き合いのある母親は、直也(なおや)の味方だ。

 私が彼と結婚するのは当然で、妻として支えることが私の生きる意味だと信じている。

 ――私は直也と結婚して、一生を棒に振り続けるつもりはなかった。

 もう、十八年間も犠牲にしてしまっている。

 人生はまだ長い。
 これからは誰にも縛られることなく、自由に生きたかった。

「……気にしないで、お父さん。ありがとう」

 父は私が直也に髪を引っ張られたり、大事にしていたものを壊されたりしていたところを見ているから……。
 私の味方になってくれた。
 お父さんがいなければ、一生直也の言いなりになっていたかもしれない。
 そう思うだけで、背筋がゾッとする。

「約束は、守ってね」
「ああ。もちろんだよ。母さんと大原さん達に、連絡先は教えない」
「うん。元気で……」

 隣に住む男のせいで親元を離れることになってしまった娘のことを、父はどう思っているのだろうか。

 寂しいと、思っていてくれたらいいのだけれど。
 そのあたりは、はっきりさせないほうがいいだろう。

 父が私のことを愛していたと知れば、離れがたくなってしまうから……。

「ああ。身体に気をつけて……。いい人が見つかった時は、連絡するんだぞ」

 いい人なんて、見つかるはずがない。

 男なんて、懲り懲りだ。
 下手に会話をして、直也のように執着された時のほうが怖い。

 ――もう二度と、必要以上に男の人と会話なんてしない。
 そう決意した私は、新たな一歩を踏み出したはずだったのに……。
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