一途なショコラティエの溺愛にとろけているので、六股幼馴染の束縛はお断り!
「このままずっと、言えなかったことを伝えたいのだが……」
「……はい」

 今なら彼に、嫌われてもいい。

 覚悟を決めた私が返事をすれば、岡本さんは苦しそうな声音とともに、思いがけない言葉を耳元で囁いた。

「――真田のことが、好きだ」

 それはずっと、岡本さんに伝えたかった気持ちで――。

 その告白を受けた私は、瞳から大粒の涙を流した。

「いつ、から……?」

 震える声で問いかければ、少しだけ身体を離した岡本さんが私の胸元から顔を上げてこちらを見下す。

 頬を伝う雫を指で拭き取った彼は、重苦しい唇を動かした。

「初めて出会った時から、ずっと……」

 ――私達は出会った瞬間から、同じ気持ちを抱いていたらしい。

 これを運命と呼ばずに、何と称すればいいのだろうか。

「……もっと早くに、思いを伝えればよかったですね……」

 言葉にしていなかっただけで、心の奥底では気持ちが通じ合っていたことを知った私は、涙を流しながら微笑んだ。

「それは……。期待してもいいのか」

 小さく頷きゆっくりと目を閉じたのは、岡本さんならわかってくれるだろうと言う信頼の現れだった。

 ――その先に言葉など、必要ない。

 愛の言葉を口にしなかったのは、純粋に恥ずかしかったからだ。

 そう言うことにしておけば、彼はきっと――。

 恋に不慣れな私を、導いてくれるはずだから……。

「今すぐ、俺のものにしたい……」

 ショコラのように甘くてほろ苦い、唇に触れるだけの口づけを済ませたあと、彼はビターチョコレートのような声音で、思いがけないことを呟いた。

 こうした時、どんな風に返事をすればいいのだろう?

 何もかもが未経験の私はゆっくりと目を開き、熱を帯びた瞳でこちらを見つめる彼と目線を合わせた。

「出会った時からずっと、私は岡本さんのものですよ」

 ――どうやらその言葉は、岡本さんにとって想定していなかったものであるらしい。

 目を細めた彼は、子どものいたずらを優しく叱りつけるような表情で、私に提案する。

「心だけでは、もの足りない。身体の隅々まで味わいたいのだが……」
「……身体、ですか……」
「ああ。そうだ……」

 彼は意味をよく理解できていない私へわかりやすく伝えるために首筋へ触れたあと、胸元へ移行し指先でくびれをなぞる。
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