一途なショコラティエの溺愛にとろけているので、六股幼馴染の束縛はお断り!
「智広さん……。私も……」

 ――私達を引き裂こうとする春の嵐が、突如として現れたのは。

「いらっしゃいませ」

 ショコラ・ドゥ・マテリーゼの出入り口から、わらわらと個性豊かな女性達が集団で来店した。
 その数、なんと五人。
 仁王立ちした先頭の女性は、私と妹さんを交互に睨みつけながら凄む。

「真田香菜って、どっち?」

 どうやら彼女達の目当ては、私であるらしい。
 まったく見覚えのない女性の集団に、どうして喧嘩を売られなければならないのだろう。

 これから何が起きるのだろうと警戒すれば、智広さんがさり気なく大きな背中で私を庇いながら応対してくれる。

「どういったご用件でしょうか」
「この店にあの女が出入りしているのは、裏が取れているのよ!」
「どっちなの!?」
「よくも、私達の彼氏を奪ったわね……!」
「あんなクズ男の、どこがいいわけ!?」
「しっかり手綱を握っておいてくれたら……! 妊娠なんてしなかったのに……!」

 彼氏を奪った? 妊娠? 

 とんでもないパワーワードを山ほど耳した私は、智広さんの背中にしがみつく。

 もしかして、この人達……。
 全員元カノだったり、しないよね……?

「冷静に話ができる、代表者一名を決めて頂けますか」
「あんたはなんなの?」
「そうよ! 関係ないでしょ!?」
「こっちには妊婦がいるのよ!」
「結婚式場のキャンセル代だって……!」
「私は真田香菜が直也と結婚するつもりなら、お金を返してほしいんだけど!」

 私の不安は、女性達の口から紡がれる言葉によって早々に解消された。

 ――直也と結婚?

 ここであの人の名前が出てくるのならば、この人達は智広さんとは関係ない。
 話を聞く限りでは……。
 私の幼馴染と交際していた女性達がなんかしらの勘違いをして、このお店にやってきたようだ。

「――俺は香菜の恋人だ」

 智広さんの口から交際していることを宣言されて、カッと頬が熱る。
 けれど……。

 彼女達が私と直也の関係を疑っているのであれば、この発言は集団の怒りをヒートアップさせかねない。
 私は慌てて智広さんの背中から顔を出し、誤解を解くために発言をしようと試みたが――。
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