一途なショコラティエの溺愛にとろけているので、六股幼馴染の束縛はお断り!
「皆さん、一旦落ち着きましょう」
「何よ! あんただって被害者でしょ!?」
「裏切る気!?」
「このままではお互いに、不必要なストレスを感じ続けるだけでしょう。当事者全員で、話し合いをするんです」
「……呼ぶの……?」
「直也は彼女をすごく大事にしているようですから。倒れている写真と住所つきで呼び出せば、飛んでくるでしょう」

 女性集団はついに仲間割れを始め、ここに直也を呼び出すべきだと口論を始めた。

 ここに幼馴染が来たら、私が住んでいる場所がバレてしまう。
 連れ戻されるのも、嫌な思いをするのも嫌だ。
 私は智広さんと一緒に居たい。

 そう反論したかったけれど、彼が目元を緩めて心配そうにこちらを見つめている姿を目にしてしまったら、起き上がって嫌ですと言いに行く気にもなれなかった。

「少し、身体を休めたほうがいい」
「ほ、本当に……大丈夫、ですから。迷惑をかけてしまい、申し訳……」
「謝らなくていい。香菜は、巻き込まれただけだ。今まで、辛かったな……」

 目元を大きな手で覆われているのをいいことに、私の瞳からは大粒の涙がポタポタと頬を伝ってこぼれ落ちていく。

「よく一人で、頑張った。偉いぞ」

 ずっと誰かに、そう言ってほしかった。

 待ち望んでいた言葉を愛する人に告げられた私は、今まで感じていた悲しい気持ちを洗い流すかのように、みっともなく嗚咽を漏らし続ける。

「無理に泣き止もうとする必要はない。これからのことは、俺に任せておけ」

 大きな左手が、私を安心させるために長い髪を優しく撫でつけてくれるのが嬉しくて……。
 私はゆっくりと頷いてから、彼の言葉を信じて目を閉じた。

 
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