一途なショコラティエの溺愛にとろけているので、六股幼馴染の束縛はお断り!
 行方不明になったのも、私が彼に見合う相応しい女になる修業をしているだけ。
 五股をしていたのは、自分も私を満足させられるような男になれるよう経験を積んでいたのだと言い訳をするのだから、とんでもない人だ。

 こんな人を好きにならなくて、本当によかった。

「俺は香菜のために、好きでもない女達と交際して来たんだぞ……!?」
「よかったな。貴様が交際していた女性に好意を抱いていなかったとしても、彼女達はお前を愛しているそうだ」
「ひ……っ!?」

 直也はまだ私を諦めきれないらしく、喚き散らしていたけれど……。

 カウンターの影から五人の交際女性たちが姿を見せたことで、急に大人しくなった。
 どうやら、彼女達に悪いことをしたと言う自覚はあるらしい。

「私はもういいや。あとは皆さんで勝手にどうぞ」
「五股だけじゃなくて、幼馴染に一方的な愛をぶつけてた束縛男だったなんて……! ストーカー予備軍とか、無理なんだけど!」
「本命彼女さんとほかの二人は、あなたのことなんて好きじゃないそうよ。あとは、私達三人ってことかしら?」
「そうかも。まぁでも、あたしもお金を返して欲しいだけだし……」
「わたし、お腹の中に赤ちゃんがいるんです……。責任を取って、この子の父親として一緒に暮らしてくれますよね……?」
「い、嫌だ! なんで俺が、責任なんて取らなきゃならねぇんだよ!」

 女性集団に行く手を阻まれた直也は、その場に尻もちをついて怯えた。

 ――情けない。

 複数の女性に囲まれ、腰を抜かすような人だったなんて……。
 あんなのを恐れていた自分が、馬鹿みたいだ。

「香菜! 助けてくれ!」
「助けを求める相手が、違いますよね……? ほら。わたし達が生み出した愛の結晶が、お腹を蹴ってるのがわかりますか……? よく触って、確かめてください……」
「うわああ!」

 妊娠に腕を掴まれて無理やりお腹を触らせられた幼馴染は、恐怖で顔を引き攣らせたままバタバタと暴れる。

 最終的には女性達が寄ってたかってネチネチと詰め続け、大人しくなった直也を四人がかりで担ぎ、何も言わずにお店から出て行ってしまった。

「人騒がせな人達だったね~」
「香菜。大丈夫か」
「……はい。私は、全然……」

 あのあと、あの人はどうなるのだろう?
 私には関係のないことだけれど。

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