一途なショコラティエの溺愛にとろけているので、六股幼馴染の束縛はお断り!
「やっと静かになったね。もー! ご近所さんにお騒がせしてごめんなさいって、謝りに行かなくちゃ!」

 大量の紙袋を手にカウンターから出てきた妹さんはわざとらしい声を上げると、外出の準備を終えて笑顔で告げる。

「お兄ちゃん! 香菜ちゃんはすごく疲れたみたいだから、癒やしてあげて!」
「言われるまでもない」
「それじゃ、行ってきまーす!」

 夕暮れ時に、女性一人で出歩くのは危ないと私に言い聞かせていたのに……。

 智広さんは妹さんが外に出ても一緒に行くとは言わずに、お店の中へ留まってくれた。

「香菜。かわいい顔を、よく見せてくれないか」

 声をかけられた私は彼と向かい合わせになり、じっと見つめ合う。
 智広さんは大変なことに巻き込まれたあとだからか、少しだけ疲れた顔をしている。

「……巻き込んで、ごめんなさい……」
「謝罪は不要だ。誤解が解けて、よかった」
「智広さんのおかげです! 私一人じゃ、きっと……。勘違いされたまま……」

 気の強い女性達五人とふざけたことばかりを喚き散らす幼馴染を相手に一人で立ち向かうのは、簡単なことではない。
 もしもの可能性を考えて青ざめれば、智広さんは私を安心させるように微笑んだ。

「……悲しまないでくれ。これから香菜には、明るい未来が待っている」
「……はい」

 過去を振り返らず、前だけを向いて歩こう。
 そう思って行動したからこそ、私は愛する人に出会えた。

「俺は香菜の、長い髪が好きだ」

 彼はあんな大騒動に巻き込まれても、私の髪を優しく梳いて愛を囁いてくれる。

「女性らしい服装も、よく似合っている」

 幼馴染の嫌がっていた服だって、褒めてくれた。

「これからも、俺と一緒に……いてくれないか」

 考えるまでもない。
 私の答えは、あなたと初めて出会った時から決めていた。

「はい」

 もちろんです。智広さん。
 大好き。
 ずっと一緒にいてください。

 伝えたいことは山ほどあったけれど。どれも口から紡ぎ出されることはなく、涙となって瞳から零れ落ちる。

「香菜。俺と――」

 その言葉を聞いた私は答えを告げる代わりに、智広さんと唇を重ね合わせた。

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