一途なショコラティエの溺愛にとろけているので、六股幼馴染の束縛はお断り!
あなたのドルチェ
『結婚しよう』

 プロポーズを受けたのは、幼馴染との大騒動を終えて二人きりになった時だった。

 私達が出会ったショコラ・ドゥ・マテリーゼで、その言葉が紡がれたなら――その申し出を断るはずがない。

 私達はその日のうちに、婚姻届を提出した。
 それが、今から一か月前のことだ。

 書類上はすでに名字も真田から岡本に変わっていて、智広さんの妻を名乗れる立場にある。

 両親には恋人を連れて行くとしか伝えていなかったから、寝耳に水だったのだろう。
 さすがは私の旦那様だ。

 不意打ちを食らわせるのが上手すぎて、盛大な拍手を送りたいくらいだった。

「香菜」

 愛の巣に戻ってきた私は靴を脱ぐことすら惜しくて、彼に勢いよく飛びつき口づけをねだる。

 彼は優しく微笑みその思いに応えると、名前を呼んでから唇を触れ合わせた。

 ショコラのように蕩けてしまいそうなほど甘い口づけは、何度経験しても馴れない。

「智広さん……早く……」

 嫌なことなど全部忘れて、智広さんのことだけを考えていたいとその先に進もうとする私に、彼は待ったをかける。

「……困った妻だ」

 私を抱き上げた智広さんは、器用にハイヒールを脱がせて自らも靴を脱ぎ、寝室へやってきた。

 ベッドに横たえられた私は、覆いかぶさってきた彼を見上げる。

「積極的な妻は、嫌いですか……?」
「まさか。好きに決まってる」

 潤んだ瞳で疑問を投げかければ、待ち望んでいた時がやってきた。

「智広さん……。大好きです……」

 どちらともなく手を伸ばし身体の隅々まで触れ合う。
 二人が一つになる瞬間は、苦いショコラのように感じる時もあるけれど――。

 その先にはいつだって、甘さがあとからやってくる。

 彼に出会えた喜びを全身で表しながら、私は彼に少しでもお返しができるようにと肌を重ね合わせ続け――朝日が登るまで、甘いひと時を過ごした。

< 36 / 37 >

この作品をシェア

pagetop