一途なショコラティエの溺愛にとろけているので、六股幼馴染の束縛はお断り!
「お構いなく……。すぐに、出ますから……」
「もー! そんなこと言わないでください! あたしの作ったポップに立ち止まってくれる人は、結構いるんですけど……。お兄ちゃんに声をかけられても逃げなかった人は、お姉さんが初めてなんですから!」
勇気を出して固辞すれば、女性店員はたくさんの新情報を私に与えてくれる。
あのポロライドは、彼女が作成したものであるらしい。
立ち止まったお客さんに彼は何度も声をかけたが、反応は思わしくなかったようだ。
……そうだよね……。
顔立ちはかなり、整っているように見受けられたけれど……。
イケメンだと心をときめかせるよりも先に、あの体格のせいで怯えの感情が大きくなってしまうのだろう。
私もせっかく自由な時間を得られたのだから、いつもと違うことをしてみたいと思わなければ……。
今頃逃げ帰っていたはずだ。
「どっちか選べないなら、両方出します!」
「あ、あの……」
「もう少々、お待ちくださいませー!」
女性店員は明るく元気な声を上げると、頭を下げてから駆け足でバッグヤードに戻ってしまった。
コーヒーと紅茶を両方用意されても、飲みきれないのに……。
断るタイミングを失ってしまった。
私が慌てている間に、入れ代わりでトレーを持った男性がこちらにやってくる。
「大変お待たせいたしました。レインボートリュフでございます」
彼は七色の虹を思わせるような、色とりどりのトリュフが載せられたお皿とカトラリーを目の前に置いた。
青、黄色、赤の、三色だけじゃなかったんだ……。
私は目を丸くしながら、チョコレートをじっと見つめる。
「嫌いなフルーツはございますか」
「いえ……。特に、好き嫌いはありません」
「そうでしたか。このレインボートリュフは、それぞれのチョコレートに異なるフルーツ果汁を合わせています」
男性は私に、レインボートリュフの説明をしてくれた。
「赤はいちご、緑はマスカット、黄色はレモン。紫はグレープ、橙はオレンジ、青はブルーベリー……」
その情報こそ、ポロライドに記載するべき内容なのでは……?
私は頭の中にハテナマークを浮かべながら、どれから食べようかと視線を巡らせる。