一途なショコラティエの溺愛にとろけているので、六股幼馴染の束縛はお断り!
「これほど瞳を輝かせて、喜んで頂いたことはなかったので……」
「ご、ごめんなさい……! う、うるさかったですか……?」
「……いえ。うるさくはありませんよ。ぜひ、ほかのトリュフもお召し上がりください」
「あ、ありがとうございます……」
トリュフはまだ、六色ある。
ここが自宅であれば、一日一個ずつ毎日のご褒美に食べ進められたけれど……。
ここはお店のイートインスペースだ。
――こんなにおいしいものを、この場ですべて完食しなければならないなんて、もったいない……!
幼馴染に与えられた物理的な苦しみとはまた違った思いを抱きながら、フォークをチョコに突き刺し口に運ぶ。
「――それと」
ああ、やっぱりおいしい……。
口の中でとろけるショコラの味に頬が緩むのを抑えられずにいると、視線をこちらへ戻した男性の声を耳にする。
彼はコック服のポケットから何かを取り出し、私に差し出した。
「ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ございません。ショコラ・ドゥ・マテリーゼのショコラティエ、岡本 智広と申します」
「え、えと……? ご丁寧にご挨拶頂き、ありがとう……ございます……?」
私は男性――岡本さんから名刺を目の前に突きつけられ、どうしてこのタイミングなのだろうかと不思議に思いながら受け取った。
その紙をじっと見つめて、はたと気づく。
名前の前に、ある文字が記載されていることを……。
「店主……?」
ショコラ・ドゥ・マテリーゼの店主。
ショコラティエってことは……。
このトリュフを作った人って、岡本さんなの……?
「店へ招き入れる前に、名刺をお渡しするべきでした」
「い、いえ! 偉い人だと知らずに失礼な態度を取ってしまい、申し訳ございませんでした……!」
冷静になって考えてみれば、普通のショコラティエが外に出て呼び込みなんてしないだろう。
権力者であったからこそ、独断でトリュフや紅茶を無償提供できたのだ。
もっと早くに気づくべきだった。
そう謝罪をすれば、岡本さんは焦る私の様子など気にすることなく真顔で告げる。
「どうしても、謝罪がしたいのでしたら……」
「は、はい! 私にできることがあれば、なんでもします……!」
「二つあるのですが、よろしいでしょうか」
「ど、どうぞ……」
岡本さんは私に、どんな風に償えと命じるのだろう?
身体で支払えなんて、言われなきゃいいけど……。
戦々恐々としながらその時を待ち続けていれば、彼の口から語られたのは意外なお願いだった。
「ご、ごめんなさい……! う、うるさかったですか……?」
「……いえ。うるさくはありませんよ。ぜひ、ほかのトリュフもお召し上がりください」
「あ、ありがとうございます……」
トリュフはまだ、六色ある。
ここが自宅であれば、一日一個ずつ毎日のご褒美に食べ進められたけれど……。
ここはお店のイートインスペースだ。
――こんなにおいしいものを、この場ですべて完食しなければならないなんて、もったいない……!
幼馴染に与えられた物理的な苦しみとはまた違った思いを抱きながら、フォークをチョコに突き刺し口に運ぶ。
「――それと」
ああ、やっぱりおいしい……。
口の中でとろけるショコラの味に頬が緩むのを抑えられずにいると、視線をこちらへ戻した男性の声を耳にする。
彼はコック服のポケットから何かを取り出し、私に差し出した。
「ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ございません。ショコラ・ドゥ・マテリーゼのショコラティエ、岡本 智広と申します」
「え、えと……? ご丁寧にご挨拶頂き、ありがとう……ございます……?」
私は男性――岡本さんから名刺を目の前に突きつけられ、どうしてこのタイミングなのだろうかと不思議に思いながら受け取った。
その紙をじっと見つめて、はたと気づく。
名前の前に、ある文字が記載されていることを……。
「店主……?」
ショコラ・ドゥ・マテリーゼの店主。
ショコラティエってことは……。
このトリュフを作った人って、岡本さんなの……?
「店へ招き入れる前に、名刺をお渡しするべきでした」
「い、いえ! 偉い人だと知らずに失礼な態度を取ってしまい、申し訳ございませんでした……!」
冷静になって考えてみれば、普通のショコラティエが外に出て呼び込みなんてしないだろう。
権力者であったからこそ、独断でトリュフや紅茶を無償提供できたのだ。
もっと早くに気づくべきだった。
そう謝罪をすれば、岡本さんは焦る私の様子など気にすることなく真顔で告げる。
「どうしても、謝罪がしたいのでしたら……」
「は、はい! 私にできることがあれば、なんでもします……!」
「二つあるのですが、よろしいでしょうか」
「ど、どうぞ……」
岡本さんは私に、どんな風に償えと命じるのだろう?
身体で支払えなんて、言われなきゃいいけど……。
戦々恐々としながらその時を待ち続けていれば、彼の口から語られたのは意外なお願いだった。