古本屋の魔女と 孤独の王子様
長崎空港に着いて小さなセスナ機に乗り換え、五島島に着いたのはお昼過ぎだった。

着いたら連絡が欲しいと、秘書の酒井から連絡が入っていた事を思い出し、日向は慣れない手付きでSMSのアプリを開き、酒井にメッセージを送る。

すると直ぐに既読が付く。
さすが仕事が早い優秀な秘書だと、日向は思いバスに乗り込む。5年ぶりに帰った地元は相変わらずで、青く澄んだ海も綺麗に輝いている。

6月なのに良い天気で、陽射しが眩しくUVケアの長袖カーディガンから出た手の甲がヒリヒリと痛む。
日傘を持ってくるべきだったと後悔しながら、足早に古本屋の入口の鍵を開ける。
少し埃っぽい店内は暗く、電気は通って無い為暗い。

とりあえず手始めに早速、頭文字の順番に並べられた本棚を、懐中電灯の灯りを頼りに丁寧に探して行く。
残念ながら店内には無かった。

もしかしたら地下の保管庫の棚の方かもと、薄暗い廊下を歩き地下に続く階段を降りる。

地下の入口の鍵をガチャリと開けると、大きな金庫のような扉が出て来る。これはダイヤル式の暗証番号を合わせないと開かない作りになっている。既に日向の頭にはこの番号は刻まれている。

ジージージー
と、ダイヤルを回せばガチャリと大きな音を立てて扉が開く。8畳ほどの広さに、古くからこの島に残る古美術品や甲冑などが置かれ、丁寧に保管されている。その奥に本棚が続く。

本棚から注意深く探し始める。1時間ほど探しただろうか、これは…平謝りするしかないかも…と諦めかけた瞬間。

一冊の本が懐中電灯に照らされて浮かび上がる。
「あった!!」
日向は思わず声を出し手を伸ばす。これだと思い、慌てて暗闇で懐中電灯の灯りを頼りに、スマホで写真を撮る。

『見つかりました。この本で間違いないでしょうか?』

秘書の酒井に早速メッセージと写真を送る。が、なかなか既読が付かない…。どうしたんだろうと思っていると、

『写真が暗過ぎて良く分かりません。明るいところで再度撮ってください。』
と、指示が来る。あっ、慌て過ぎて写真の確認をしないで送ってしまっていた。

バタバタと階段を登り、店の外に出る。
波の音を聴きながら、防波堤のコンクリートブロックを台に、再度写真を撮り送る。

すると直ぐに既読が付いて、
『確認出来ました。今から副社長にも見せて了承をもらいます。少々お待ち下さい。』
と、メッセージが入る。

日向は店に戻り、地下の施錠をしながら返信が来るのを待っていた。
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