古本屋の魔女と 孤独の王子様
次の日…どうしても気になり日向にメッセージを送る。
『おはよう。ちゃんと病院に行ったか?薬はもらったか?ちゃんとケアを怠らないでくれ。』
それだけ一方的に打って、いつものように仕事に入る。
午前中はバタバタとクレーム対応に追われ、次にスマホを見たのは昼過ぎだった。

日向からの返信が入っていた。それだけで胸が早鐘のように打ち始める。
『おはようございます。病院へ行って来ました。もうこれ以上、心配しないで下さい。』
と、言う拒絶の言葉…

フーッとため息を吐いて副社長室の椅子に座れば、スマホが震える。プライベート用のスマホはあまり動く事は無いから、慌てて取り出し中を見る。
すると、日向から着信がまた一件…
『あの!こんなお金受け取れません!!』
明らかに怒りが含まれているメッセージを受け取り、俺はほくそ笑む。
昨夜帰りがけに彼女に気付かれぬよう、そっと茶封筒を彼女のバックに忍ばせた。

中には謝礼金と称して10万入っている。
あんなに拒んでいた日向だから、きっと抗議が来るだろうと予想してはいたが。

なんで返信するべきか…。
俺は考えあぐねてしばらく間を取る。

午後3時、移動の車の中で返事を思い付きプライベート用のスマホを手に取り、
『それは、慰謝料だと思って治療費に当てて欲しい。気にするな。』
と、メッセージを送る。
そして、俺は例の古本をカバンから出して読み始める。
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