古本屋の魔女と 孤独の王子様
次の日は土曜で、久しぶりに何も無い休日だったから…。

日向と昔の思い出を分かち合って、楽しい時間を過ごしたから。
2人で笑って、酒も入っていたし、テンションは上がっていた…。
言い訳なんて何とでも言える。

後先考えずに、ただ目の前の日向しか見えなかったんだ。

俺は日向を抱いた…。

それについては何も後悔は無い。
夜が更けて、帰ろうとする彼女を繋ぎ止める何かが欲しかった。

離したくないと思ってしまった。だからって勢いとかでは決してなかったし、初心の日向を気遣って、大事な大事な宝物を開くように大切に扱ったつもりだ。

これから2人の関係は変わって行くものだとばかり、俺は夢見てしまったのだろうか…。
幸せな気持ちで彼女を抱きしめて眠った翌朝。

そこに日向は居なかった…。

あまり寝付きが悪い俺は、普段ならちょっとしたもの音でさえ目が覚めるのに…。そんな日に限って全く起きられず、熟睡してしまった。

事態を知って、慌てて飛び起きたのは8時過ぎ。
メッセージアプリを開き『古本屋の魔女』を探す。
そこには1通のメッセージが入っていた。

『孤独な王子様、どうか生きる事を諦めないで、さようなら。』
その後に、退会しましたの文字が続く…

サーっと血の気が引く音を聞く。
俺の日向が…消えてしまう…と、思った瞬間、車のキーを握り走り出していた。

探し出すべきは…日向の働く図書館に、前田さんから聞き出したアパート、都内の防波堤、一緒に行ったレストランに、立ち寄ったバーガーショップ…ありとあらゆる場所を必死になって探した。

なり振り構わず探した。
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