夏の出会いは素敵な恋の予感~超人気俳優になった憧れの先輩は、溢れんばかりの愛情で甘く私を包み込む~
その瞬間、朝吹さんは、手のひらで私の頭を優しく撫でた。
ポッと心が暖かくなる……
何だろう、この気持ちは――
あれからずっと、人を愛することから逃げていたはずなのに、自然に胸の鼓動が早くなる。


ダ、ダメだ……
こんな素敵な人に恋心を抱いてはいけない。
間違いなくパートナーがいるだろうし、それに、こんなバカな過去のある女なんて相手にしてもらえない。


「琉唯は、私の生き甲斐なんです。私の一方的な思いですけど……。琉唯を立派な俳優にするためなら私は何でもします。いつかは私の手から離れていく時がくるかも知れませんが、それまでは、私が……。確かに、自分ができなかったことを琉唯に押し付けてるだけかも知れません。本当に身勝手な理由です」


「良いじゃないですか。琉唯君はあなたに感謝していますよ。あなたと二人三脚でここまで来て、2人で得たものはとんでもなく大きい。他の誰かではなく、琉唯君には高梨さんの支えがなければここまで来ることはできなかったんです」


情けない……私はもう大人なのにどうしてこんなにも涙が出るんだろう。
恥ずかしいけど、朝吹さんになら見られていても安心できる。だから……今だけは、泣くのを許してほしい。
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