夏の出会いは素敵な恋の予感~超人気俳優になった憧れの先輩は、溢れんばかりの愛情で甘く私を包み込む~
「ありがとうな、夏凛」


その時、どぎまぎしている私のほっぺに何か柔らかいものが触れたのを感じた。


えっ、これって……


 時が止まるってこのことだ。
 ほっぺに軽くキスをされ、泡だらけの手がお皿を洗えずに固まってしまった。


嬉しい――


……ん? でも、先輩はいつも女性にこんなことをしてるんだろうか?
「ありがとう」って、まるでただの軽い挨拶みたいに。


私は、あちこちに揺れ動く気持ちをどうにか落ち着かせ、最後まで綺麗に片付けをした。
そして、琉唯先輩の笑顔に見送られ、マンションをあとにした。


 いったい今夜はなんだったのか――


 帰り道、1人歩く体が、ほんの少しフラフラして不思議な感覚に襲われる。最近、よくこんな感じになる。


「やっぱり全部、夢……だったのかな?」


色々あったけど、今日のつかの間の2人きりの時間を、私は生涯忘れたくないし、ずっとずっと大切にしたいと思った。
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