夏の出会いは素敵な恋の予感~超人気俳優になった憧れの先輩は、溢れんばかりの愛情で甘く私を包み込む~
「……すみません」


「嫌……かな?」


「いえ、嫌っていうわけじゃないです。ただ、朝吹課長にはファンがたくさんいるから、何もなかったとしても、もし誰かに見られて変な噂が広がったりしたら……」


「そんなこと……」


「ごめんなさい。今……」


 琉唯先輩の顔が頭に浮かぶ。
 私のことを「コロン」「家政婦」だと思ってる先輩だけど、でも……


「好きな人がいるのかな?」


「えっ? あ、あの……」


「……いいよ、言わないで。また……改めて誘うから。そろそろ行こうか」


 そう言って、朝吹課長は伝票を手に取り、イスから立ち上がった。


朝吹課長が初めて見せた切なげな表情に、私の心が少しザワついた。
何もなかったように話をしながらも、よくわからない感情が胸に押し寄せてくる。


よく考えたら、私は朝吹課長のプライベートを何一つ知らない。
今さらながら……隣を歩く課長を見てそう思った。
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