月島家のお守り四つ子~イケメン女子でも可愛いものが好きなんです!〜
***

 那良先輩たちを振り切って、朔さんについてきてもらいながらなんとか教室に到着する。
 心配そうにほんの少し眉を下げた朔さんと別れ教室に入ると、生徒玄関での様子と同じように取り囲まれた。

「あっ、陽木さんやっと来た!」
「待ってたんだよ!? 昨日の話聞かせてよ! 私部活あったから見てなかったし!」

 昨日とは打って変わった雰囲気に目を白黒させてしまう。
 そのまま何も答えられずにいたけれど、昨日教室にいたクラスメートたちが私の代わりに得意げに話し始めた。

「ホントすごかったぜ! 大人の男相手に引けをとらないどころか追い詰めて倒しちまったんだから!」
「どんな風に? 竹刀使ってたって聞いたけど、剣道してたの?」

 初めに質問してきた女子も、解説し始めた男子の話を聞き始める。
 なんだか私が話す必要無いみたい。
 でもそれならそれで避けてくれないかな? 席に行けないよ……。
 困り果てるけど、話に夢中なクラスメートたちは人垣を崩すつもりは無いみたい。私と望ちゃんはその場から動けずにいた。

「むぅ……これじゃあ、あさひちゃんを独り占めできないじゃない」

 拗ねたような望ちゃんの言葉が聞こえて、私は「あはは」と苦笑いする。
 すると、人垣の向こうから視線を感じで顔を上げた。
 敵意に満ちた視線は、昨日の昼休みに私に難癖をつけてきた女子たちだ。
 私が望ちゃんのお兄さんたちに近づいているのが気に入らないみたいだったし、今の状況に不満を覚えているのかもしれない。
 面倒なことにならなければいいなと思っていると、一通り私の話をし終えた男子がいきなり叫び出した。

「あー! 陽木さんの実力もっと早く知っていれば、文化祭の出し物別の考えたのにー!」
「あはは、決めたの夏休み前なんだから無理に決まってるじゃん」

 笑って答える周囲のクラスメートに、私は首を傾げた。

「文化祭の、出し物?」
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