月島家のお守り四つ子~イケメン女子でも可愛いものが好きなんです!〜
「は? 晦、なに言ってんの?」

 普段は無気力な感じに淡々と話す朔さんとは思えないほどの冷たい声音に場が凍ったような気がした。

「あさひがお前の彼女になんかなるわけないだろ?」
「なんだ? 嫉妬か? 言っとくけど、俺は本気で彼女にしたいって言ったんだぜ?」
「へ?」

 『本気で』と言う晦さんだけど、挑発的に笑う様子を見るとどこまで本気なのか判断がつかない。
 困惑しているうちに弦さんまで参戦してきた。

「ちょっと! それなら僕だってあさひちゃんの彼氏に立候補したいんだけど!?」
「はい!?」

 いきなりすぎてとにかく驚く。好意を持ってくれているとは思っていたけれど、まさか恋愛的な意味だとは思ってなかったし。
 にらみ合う三人に、これはどこまで本気なんだろうって判断に困る。
 私がワタワタしていると、満さんがほがらかな笑顔で間に入ってくれた。

「まあまあ、三人とも落ち着いて。そんな風にケンカしちゃうなら、俺があさひさんをもらっちゃうから」
「「「はぁ!?」」」

 間に入ってくれたと思ったのに、満さんは火に油を注ぐような言葉を口にする。
 もはやどう収集つければいいのかわからない私の横で、望ちゃんがドンッ! とテーブルに音を立てて両手をついた。

「兄さんたち、勝手なこと言わないで! あさひちゃんは私の大事な友だちなんだから! あさひちゃんの彼氏になりたいなら私の許可を取ってからにしてちょうだい!」
「……」

 望ちゃんの斜め上な宣言に、私はこの場を収めるのをあきらめた。
 きっと兄妹のじゃれ合いの一つなんだよね。今回はそのネタに私がなったってだけ。
 うん、本当に仲のいい兄妹だよね。
 私は現実逃避に近い気分で、だしの利いた美味しい炊き込みご飯を黙々と食べた。
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