月島家のお守り四つ子~イケメン女子でも可愛いものが好きなんです!〜
「……そうか」

 いつものように、淡々とした口調の返事。でも、静かな夜には優しく響いた。
 そんな優しい響きのまま、朔さんはポツリと告げる。

「みんな、ちゃんとわかってくれるといいな」
「え?」

 夜空を見上げたままの朔さんは、同じ夜空色の目だけを私に向けた。

「剣道が強くてカッコイイあさひも、カワイイものが好きあさひも、一人のあさひって女の子だ。どっちかを否定するなんておかしいだろ?」
「あ……」

 周りにカワイイもの好きを否定され続けてきたからかな? 私自身、どっちかを隠さなきゃならないと思い込んでいた。
 でも、朔さんの言葉で気づく。
 剣道をする私も、カワイイものが好きな私も、どっちも私なんだ。本当は隠さなくていいことなんだって。
 スゥ……と、朔さんの言葉が私の中に入って染み渡っていく。
 私を縛り付けていた鎖みたいなものが外れて、体が軽くなった感じ。
 私はいつの間にか自分で自分を縛り付けていたんだって、気づいた。

「……ありがとうございます、朔さん」
「え?」

 あまりのうれしさに、胸からあふれる温かさをそのまま感謝の言葉にして不思議そうな顔をした朔さんを見上げる。
 夜に溶けたような紺の髪と黒い瞳が、空の星々のきらめきを映しているみたいに輝いて見えた。

「私、カワイイもの好きって気持ちと剣道……どっちかを隠さなきゃいけないって思い込んでました。でも違った、どっちも私の大切な一部なんだって……それに気づかせてくれて、ありがとうございます」

 心からの笑顔で告げると、朔さんの目が大きく見開かれる。
 そのままの状態で、形のいい唇が動いた。

「かわいい……」

 って。
< 74 / 100 >

この作品をシェア

pagetop