【完結】婚約破棄された男装令嬢ヴァレンティーナは明日を強く生きる!そして愛を知る

 黒尽くめの格好をして明らかに棒などの武器を持ち、ウロウロしている。
 一人が何か液体のようなものを道場の壁に――油か!

「何をしている!!!」

 ヴァレンティーナが叫ぶと、 黒尽くめ達はビクリとし一斉にヴァレンティーナを見る。

「ラファエルか!?」

「いや、違うぞ! あいつだ! ヴァレンとかいう旅人!」

「あいつに殴られたんだ! 一人だろう!? やっちまえ!!」

 男達は十人もいて、ヴァレンティーナを取り囲む。
 夕方の男も、二人いた。
 ヴァレンティーナはマントを脱ぎ捨て、また鞘のままレイピアを右手に構えた。

「またお前達か!!」 
 
「こいつか? 女のような男ってのは……大したことねーだろ! 細腕じゃねーか」

 一人の男が消していた発光石のランタンを点けて、ヴァレンティーナの方へ向けた。
 ヴァレンティーナの美しい顔を見て、男達は驚く。

「へー! なんだこれはラファエルのやつ、とうとう男を囲うようになったのか?」

「へっへっへ! お坊ちゃんは男がお好きかぁ」

「くだらない事で彼を侮辱するな!! お前達、一体何をしようとしていた!!」

「うるせー! ラファエルも、この村の奴らもこんな道場があるから、調子に乗るんだ!!」

「なんだって……」

 ヴァレンティーナの目が見開かれる。
 一瞬で怒りが燃え上がる。

 道場を燃やそうとしていたのだ!!

「どこまで外道なんだ……お前らは!!」

「ヒャハハハ!! 綺麗な顔した男は俺は好物なんだ」

「もしかしたら、女かもしれない。脱がしてみようぜ」

「男だっていい! 道場でこいつを犯してやるのはどうだ!? どうせお前も童貞だろう? 俺等にたっぷりご奉仕しな!」

 男が言い終わる前に、ヴァレンティーナが動いた。
 光を当てた場所からヴァレンティーナが一瞬でいなくなり、一人カエルを潰したような声が響く。

「うぐっ」

「ぐひゃっ!」

 消える影のようにヴァレンティーナがまたレイピアの『柄打撃』を繰り返す。

「なんだ! 何が起きている!」

「そっちだ!!」

 大きく振るった棒など当たるわけがない。
 これが毎日,何十年、何千回と修行してきた剣士の動きだ――!!

 一人、また一人とヴァレンティーナが倒していく……が!
 
 更に男を倒した時、ジャリ……!! と何かがヴァレンティーナの身体を拘束した。

「!! これはっ!?」

 両端に重りのついた鎖だった。
 それがヴァレンティーナの身体に巻き付いたのだ。
 両腕も絡みとられてしまい、攻撃ができない。

「おおお!! やったぜ!」
「この女男め! よくもやってくれたな!!」

 次に倒そうとした男に、頬をぶたれ腹に蹴りを入れられる。

「ぐっ……!!」

 その攻撃でも、なんとか倒れなかったヴァレンティーナ。
 だが後ろから羽交い締めにされ、泥濘んだ地面に叩きつけられた。
 黒髪をまとめていた紐がほどける。

「おい! 顔に傷はつけるなよ、せっかくの美形なんだからな!」

「さっさと道場を開けろ! 窓を割れ!!」

「やめろ! 卑怯者どもめ!!」

「黙れ!」

 昏倒した仲間はそのままで、残った半数が道場を開けようと動き出した。
 他はヴァレンティーナの周りに集まる。

「おいおいおい! こいつもしかして!」

「触るな! この下衆どもが!!」
 
 ふんわりとしたシャツが鎖で拘束された事によって、女性らしい体つきがあらわになってしまった。
 
「女だ!!」

 ヴァレンティーナの脳裏に、最悪な光景が浮かぶ。

「やったぜ! 早く裸にしてしまえ!」

「さっさと道場を開けろよ! 犯しつくしてやる!」

 必死で握っていたレイピアが無理やり奪われ、遠くに捨てられた。
 男達がヴァレンティーナの肢体に手を伸ばす。
 
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