航空自衛官の元カレの偽装婚約者になりました

プロローグ




 *

ベッドの上で私に覆い被さる彼からぽたりと汗が落ちてくる。

どのくらいこうして抱き合っているのだろう。

止まることなく与えられる快感に頭の中はとろけてなにも考えられなくなる。

朝なんてこなければいい。

このまま時間が止まって、彼といつまでも一緒にいたい。

シーツをぎゅっと握る私の手に彼の大きな手が重なり、優しく握り込まれた。

腰の動きを止めた彼が私の顔をじっと見つめる。


『――美羽(みわ)。明日の朝、俺が寝ている間にここを離れて。そうじゃないと俺は美羽を手放せない。引き止めたくなるから』


私の体を優しく包む彼の腕にぎゅっと強く力がこもった。

このまま離したくないと、そう言われているようで胸の奥が切なくなる。

私だって彼と同じ気持ちだ。

でも、彼のためにも別れを選んだのだから……。


『愛してる、美羽」


その夜、引っ越しの荷物をまとめた段ボールが積み重なる部屋で彼は私を抱き続けた。

翌朝、眠っている彼の唇に最後のキスをして私は彼の家を静かに出ていった。


もう三年も前のことだ。

それなのに私の心の中には今も彼がいて、彼のことだけを想い続けている――。


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