航空自衛官の元カレの偽装婚約者になりました
秋村悠翔――三年前に別れた元カレだ。
彼も私に気付いたのだろう。その場で足を止め、驚いたように目を見開いている。
「さぁさぁ、悠翔もそこに座って」
亮二さんが悠翔の背中を押しながらこちらに向かって歩いてくる。
悠翔を私の隣のイスに座らせてから、自分はさっきまで座っていた明日香の隣に腰を下ろした。
突然の元カレ登場という状況が飲み込めない私も力が抜けたようにイスに座り直す。
隣を見たいような、見たくないような……。
「久しぶり、美羽」
ふと聞こえた懐かしい低い声に弾かれたように顔を上げる。隣を見ると、涼しげな切れ長の瞳と目が合い慌てて逸らした。
「ひ、久しぶり」
最後に会った三年前と変わらない悠翔を見て、胸の奥がきゅっと締め付けられる。
彼はこの街を離れたはずだ。自分の意志ではなく、職場の辞令で県外への転勤が決まったから。
それが私たちの別れた理由のひとつなのだけれど……。
「美羽ちゃんビックリした?」
亮二さんに声を掛けられてビクッと肩が跳ねる。
「実は悠翔、去年からこっちに戻ってきてるんだ。また俺と同じ基地にいる」
「そうなんですね」