航空自衛官の元カレの偽装婚約者になりました


上空では最後に離陸した悠翔の機体に、先に離陸した三機が集まってきた。四機が揃って白い煙を噴射させながら客席上空へと近づいてくる。

すると隣で同じ光景を見ている羽琉から聞き慣れない単語が聞こえた。

うまく聞き取れずに「え?」と聞き返すと、「さっきの演目だよ」と羽琉が答える。


「これから披露される演技にはひとつひとつ名前が付けられてるんだ」


羽琉が得意気に教えてくれた。

「そうなんだ」と答えたものの、なぜ羽琉がそんなことを知っているのだろう。

不思議に思っていると、滑走路から残りの二機が離陸した。

その後もフォーメーションを変えながら圧巻のアクロバット飛行が披露され、上空を見上げる観客たちからは次々と歓声が上がる。

どれが悠翔の機体かはもうわからないけれど、あの中のどれかを彼が操縦していると思うと感動で胸が詰まる思いだ。

ようやくこの目で見ることができた。

演目は続き、二機が白い煙――羽琉が言うにはスモークと呼ぶらしい――を噴射しながら左右に分かれて飛び、真っ青な上空になにかを描いていく。


「あ、ハートだ」


出来上がったのは巨大なハートマーク。

風がないため流されずにくっきりと上空に浮かび上がっている。


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