航空自衛官の元カレの偽装婚約者になりました
するとすぐさま左下から現れた別の一機がハートの中央をくぐり抜けてスモークの矢を描いた。
観客たちからはひと際大きな歓声が上がる。
私もすっかり見惚れていると、隣から肩をトントンと叩かれた。
「さっきのハートに矢を射抜いたのは四番機。悠翔さんだよ」
「そうなの?」
もう一度上空を見上げたとき、ふと悠翔の言葉を思い出した。
『今度の展示飛行は美羽のために飛ぶから』
胸が切ないくらいにきゅっと締め付けられる。
目尻に涙が浮かび、羽琉に気付かれないようにさっと指先でぬぐった。
その後も演目が続き、しばらくしてから六機が合流して着陸をした。
三十分ほどのアクロバット飛行は私を含めた観客全員をたっぷりと魅了して無事に終了したようだ。
「やっぱりかっこいいな」
隣で羽琉の呟く声が聞こえた。
「俺にもなれるかな」
「えっ」
それって……。
「羽琉、パイロットになりたいの?」
尋ねると、羽琉が小さくうなずく。
「俺も悠翔さんたちみたいなパイロットになりたい」
そう答えた羽琉の視線の先にいるのは演技を終えた隊員たちの姿だ。