航空自衛官の元カレの偽装婚約者になりました


「この前、姉ちゃんに連れられて行ったお祭りで初めて悠翔さんたちの演技を見たときに圧倒された。こんなにすごいものがあるんだって目が離せなくなって、動画撮るのを忘れるくらい夢中で見ちゃって」


たしか、スマートフォンの充電が切れたから録画ができなかったと話していたけれど、実際は見惚れていて撮れなかったようだ。

それくらい圧倒されたのだろう。


「それから航空自衛隊のことや悠翔さんたちの部隊についていろいろと調べた。今日もすごく楽しみにしてたんだ」

「そっか。だから詳しかったんだね」


上空で披露される演技のひとつひとつを羽琉は詳しく知っているようで、隣で私に教えてくれていた。それを不思議に思っていたけれど、その理由がようやくわかった。


「姉ちゃん。俺、夢ができたよ」


私の目をまっすぐに見つめて羽琉が言う。


「俺も悠翔さんたちみたいなパイロットになりたい。将来は航空自衛隊に入りたいんだ」


そう話す羽琉の目が輝いて見える。そんな弟を見て、胸がぐっと熱くなるのを感じた。

学校へ行ってもあまり楽しそうではなく、友達も作らず、部活動もしない。家にこもってゲームばかりしている羽琉からは想像できないほど生き生きとした表情だ。


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