航空自衛官の元カレの偽装婚約者になりました
「あと、これは前から言おうと思ってたことなんだけど……」
一瞬だけ私から目を逸らしてから、なにかを決意したように強い眼差しの羽琉が再び私を見つめる。
「俺ならもう大丈夫だから」
はっきりとした口調で羽琉はそう言った。
「俺が心配で姉ちゃんはずっとそばにいてくれたんだよね。でも、もうすぐ父さんも日本に帰ってくるし、俺はもう姉ちゃんがいなくても大丈夫だから。いままで俺を見守ってくれてありがとう。これからは自分のために生きてよ」
「羽琉……」
ぶわっと涙が溢れる。
羽琉はいつからこんなに大人になったのだろう。
私がそばに寄り添って守らないといけないと思っていた。
でも、羽琉は夢を見つけたことで成長して、自分自身の力で前に進み始めたのかもしれない。
「こんなところで泣くなって」
すんすんと鼻をすすって泣いている私の頭を羽琉の手がぽんと撫でる。
思えば、いつの間にか身長もすっかり抜かされてしまった。
まだまだ小さな弟だと思っていたけれど、羽琉はしっかりと成長していたんだ。
それなら私も弟離れをしないといけない。
目に浮かぶ涙を指先でそっと拭ってから笑顔を作った。