航空自衛官の元カレの偽装婚約者になりました
「羽琉ならなれるよ、パイロットに。応援してるからね」
そう伝えて羽琉の背中をパンと叩く。
そんなに力を込めていないはずなのに「痛ってー」と大げさに羽琉が呟き、ふたりで同時に笑った。
「あっ。そろそろファンサービス始まるかも。悠翔さんからサイン貰わないと」
羽琉が思い出したように声を上げた。
これから、先ほどまでアクロバット飛行をしていた隊員たちによるファンサービスと呼ばれるものが始まり、彼らと一緒に写真撮影などができるのだ。
「もちろん姉ちゃんも行くだろ」
「うん」
羽琉に誘われてうなずいた。
私は写真もサインも貰わないけれど、ただ一言だけ演技を終えたばかりの悠翔に感想を伝えたい。
羽琉と一緒にファンサービスが行われるスペースまで歩いて向かう。そこにはすでにたくさんの人が集まっていた。
青色の制服を着た隊員たちにそれぞれ列ができている。
「悠翔さんいるかな……あっ、いた!」
私よりも先に羽琉が悠翔を見つけた。私もそちらに視線を向ける。
そこには青色の制服に身を包んだ凛々しい姿の悠翔がいて、小学生くらいの男の子に笑顔でサインに応じている。