航空自衛官の元カレの偽装婚約者になりました
悠翔の職業は亮二さんと同じ航空自衛官。
三年前は戦闘機に乗るパイロットをしていたけれど、今も変わらないのだろうか。
それにしても、こっちに戻ってきていたなんて……。
ふと思い出すのは悠翔と最後に会った日。
明け方、まだ眠っている彼を置いて、泣きながら部屋を飛び出したあの日のことで――。
「悠翔も来たことだし、俺と明日香からふたりに報告があります」
亮二さんの声が聞こえてハッと意識を引き戻した。
お調子者の彼にしては珍しく真面目な声にこの場の雰囲気が緊張に包まれる。
亮二さんと明日香は顔を見合わせたあと、向かいに座る私と悠翔に視線を向けた。
「俺たち、結婚することにしました」
ふたりに呼び出されたときからその報告だろうと予想はしていた。
だから驚いたりはしないけれど、うれしい気持ちがじわじわと込み上げてくる。
「おめでとう。明日香、亮二さん」
悠翔との思いがけない再会に戸惑っていた私の表情は自然と緩み、笑顔が戻る。
「ありがとう、美羽」
はにかんだような笑顔を見せる明日香からは幸せオーラが溢れている。その隣に座る亮二さんも心からうれしそうに笑っていた。