航空自衛官の元カレの偽装婚約者になりました

愛梨さんがさらに鋭い視線で睨んでくる。


「前に会ったときも言ったでしょ。あなたでは秋村さんとは釣り合わないし、結婚相手には相応しくないって」

「上官の娘だと嘘をつくようなあなたこそ悠翔の相手には相応しくないと思います」


前回は言われっ放しでなにも言い返せなかった。でも今日は違う。

上官の娘で、父親が悠翔と同じ仕事に就いている彼女ならたしかに悠翔の仕事を私よりも深く理解していると思ったし、彼を支えられる女性だと納得した。

でも、愛梨さんが上官の娘だというのが嘘だとわかった今、私と愛梨さんの立場は変わらない。

いや、私の方が悠翔を理解しているはずだ。


「あなたよりも私の方が悠翔のことを知っています」


だから愛梨さんに悠翔を渡したくない。

強くそう思ってから、改めて自分の本当の気持ちに気付いてしまった。

私はやっぱり悠翔が好きだ。

諦めようと思ったのに、彼への想いがますます強くなっている。


「……なんなのよ、あなた」


低い声でぼそりと呟いた愛梨さんが私に一歩詰め寄った。


「本当にじゃまなのよ。あなたがいなかったら私が秋村さんの彼女になれるはずだったのに」