航空自衛官の元カレの偽装婚約者になりました
「ふたりともおめでとう」
悠翔の落ち着いた声が隣から聞こえた。ちらっと彼を見ると、涼しげな目元を優しく細めて微笑んでいる。
「ありがとな、悠翔。俺と明日香の出会いのきっかけはお前と美羽ちゃんだから、ふたり一緒に結婚の報告がしたかったんだ」
「なるほど。それでここに美羽もいるのか」
亮二さんの言葉を聞いた悠翔がちらっと私に視線を向ける。不意に目が合って、胸がドキッと小さく跳ねた。
悠翔の視線が再び亮二さんに戻る。
「入籍の時期はどうするんだ?」
彼の問いに亮二さんと明日香が答える。続いて、両親への挨拶や、職場への報告、それに結婚式についてと話題は変わった。
幸せな気持ちでそれを聞いていたはずが次第に切なさが込み上げて、浮かべた笑顔が引きつってしまう。
小学校からの親友でもある明日香の結婚は心からうれしいし、祝福しているはずなのに。
ふと思い出すのは三年前の自分の言葉。
『ごめん、悠翔とは結婚できない』
大好きな彼のプロポーズを断ったときのことを鮮明に思い出す――